人魚たちの歌声を聞いた船乗りの末路
十年続いた戦争がようやく終わった。
俺達は一刻も早く故郷に帰る為に最短の航路で船を進めていた。
その途中、寄港した街で気になる噂を聞いたのだ。
――絶対に近づいてはいけない海域がある。
怪しく思った俺が船乗りを問いただした所、何とその海域にはセイレーンが出ると言う。
セイレーン。それは上半身が人間、下半身は魚の尾を持つという人魚の一種だ。
しかも皆が粒ぞろいの美女ばかりの種族で聞き惚れるほどの妖艶な歌声を持つという。
何でも、その歌声にはサキュバスの魅了にも似たような依存性を秘めており、聞いているだけで射精したのと同じくらいの快感を与えられるというのだ。
男ならば一度は聞いてみたくなるセイレーンの歌声。
しかし、その街で古くから漁業を営んでいる者達は口々に言った。
『あの海域にだけは近づいてはならぬ』
セイレーンは男を喰らうという。女しか存在しないセイレーンはヒト型であれば交配可能らしく、常にオスを欲して発情しているそうだ。彼女達が持つ魅惑的な歌声もまた、そんな船乗りたちを誘惑する為のものなんだとか。
しかし、俺達は戦士だ。女型の魔物如きにこの人数が負けるなんてありえない。
街の漁師たちが必死に止めるのも振り払って、俺達は一路その海域へと船を進めたのだった。
「いやー。漁師のクソ爺どもにもウンザリしましたねえ」
「そうだな。俺達を誰だと思ってやがる。かの十年戦争を終わらせた英雄だぞ」
そんな事を話しながら屈強な男達が船を漕いでいる。
六人ずつ、船の両弦でオールを漕ぐのは全員俺の部下だ。
盛り上がった筋肉をいからせながら力任せに櫂をぶん回す。途中の街で雇った漕ぎ手は俺達が魔の海域へと向かうと聞いて怖気づいて逃げたが、なぁに。人数は十分過ぎるほどだ。
俺を含め総勢二十人の男達は今、街の者が恐れていたセイレーンの歌声を聞くべく、例の海域へと船を進めていた。
セイレーンと共にこの海域は暗礁地帯としても知られており、難破船が後を絶たないと言う。が、俺達が乗るのは船底が浅いガレー船だ。座礁の心配はそうそう無い筈。
何よりも、この海路は故郷への一番の近道でもあるのだ。
「セイレーンの歌も聞けて早く帰れるなんて一石二鳥じゃないか。なあ、副長?」
「ええ! 例えセイレーンが襲ってきても俺達なら返り討ちにしてやらあ」
副官のオヤジはガハハと笑って答えた。十年もの長き戦争を戦い抜いた俺達だ。たくさんの英雄とも戦い打ち勝ってきたのだ。
今更魔物如きに敗れるなんて想像もしていない。余裕たっぷりに俺達は船からの眺めを楽しんでいた。
「さて、そろそろ近くなってきたな」
海面から飛び出した岩礁が増え始めた。俺は衝突を避ける為に船速を落とすよう部下に命じた。
「まさかの事もあるからな。漕ぎ手にはこれを渡してくれ」
「これは……」
手に空いている部下に渡したのは耳栓だった。
「蝋を固めて作ったんだ。これで俺達が存分に歌を聞いても漕ぎ手はやられずに済む」
「了解です! さあ交代だ、変われ」
その部下はそう言いながら漕ぎ役の背中を勢い良く叩いた。
オールを持った奴らには耳栓をさせ、手の空いているヤツは自由にセイレーンの歌声を聞く。
勿論、俺もセイレーンの歌を堪能するつもりでいる。
だがしかし……
「すまん副長。まだ彼女達が現れない今の内に俺をマストに縛り付けてくれないか?」
俺は双眼鏡を覗きながら辺りを見回していた副長の肩を小突くと、背後の巨大なマストを指さした。
頑丈なオークの巨木を切り出して作ったマストならば、例えセイレーンの歌声に正気を失っても勢い余って海に飛び込むなんて事もしないだろう。
「え? いいんですかい?」
毛むくじゃらの腕をまくり上げながら、副長のオヤジは怪訝そうな顔をする。
十年間連れ添った歴戦の勇士。しかし、それでも俺の真意を測りかねているらしい。
「漁師達から聞かなかったか? セイレーンの歌を聞いて正気を失う奴もいるらしいんだ。指示を出す俺が暴れ出したら手に負えないだろ?」
「成程、流石ですな」
オヤジは快く頷いて、早速俺を縄で縛りつけてくれた。
マストに括りつけられていく自分の身体。ロープが俺の身体を何周も巻いていく。
その光景を見ながら、俺はこれから訪れるであろう楽しいひと時へ期待と股間を膨らませつつあった。
「おい、あれじゃないか!?」
暗礁海域に入ってから間もなくの事だ。一人の兵士がある岩礁を指さした。
耳栓をしていて声が聞こえない漕ぎ手にも小突いて知らせている。
全員の視線がその岩場の一点に注がれる。
「おお、あれは……」
海面から突き出した小さな岩山。その陰に人が見えた。
金色の髪は揺れていて、物憂げに俯く女性の横顔。
「ん……見間違いか?」
しかし船が動き、その向こう側が見えるようになった頃には美しい人影は消えていた。
注意深く辺りを見回すと、水面には今まさに誰かが飛び込んだ後のような飛沫が揺らいでいた。白く泡立っていた水面はやがてゆったりしたさざ波に戻る。
「やはり、さっきのあれは見間違いなんかじゃない」
確信と共に唾が喉を通り抜けていく。
「あれを見てください!」
と、別の船べりで岩礁を見張っていた兵士が指さしながら叫んだ。
マストに縛り付けられた身体で唯一自由に動く首をぐりんと向ける。
「おお……」
思わず声が漏れた。
いくつかの岩が突き出た浅瀬に人魚がいたのだ。
銀色、金色、様々な美しい髪の色。人魚達は濡れそぼった巻き髪を肌に張り付かせ岩で身体を預けて座っている。
瑞々しい乳房が露わになり、濡れ髪を艶っぽくへばりつかせている。凝視するとその乳首は淡いピンク色。
太すぎず細すぎないくびれは男の欲情を駆り立てるには十分だが、その下半身は紛れも無く魚の姿だ。骨盤から秘部にかけて人肌と生白い魚の腹の境界があり、人間の秘部に当たる部分は締まりのよさそうな割れ目があった。まるでイルカの潮吹き孔のようで、濡れた隙間にアレを滑り込ませるとさぞかし心地良さそうだ。
ヒト族の男をさらって子を孕むという習性も頷ける。あんな女体に誘われたら例え魚の下半身でもヤリたくなってしまう。
船べりから身を乗り出しながら見とれる兵士達を誘うように、人魚達は微笑を讃えながら手を振っていた。
彼女達の美しい鱗は日光に当てられ煌びやかに輝いている。
「何て神々しいんだ」
「まるで海の女神だ……」
兵士達から溜息のような声が漏れた。
戦争帰りに立ち寄った街々で俺達に言い寄ってきた女は多かった。武勇と戦で得た富を目当てに媚びてきた数多もの高級娼婦達。普通の客には股も開かないような美女ですら思うままに抱いてきたのだ。
しかし、今俺達の前で身体を横たえている人魚たちは、それらの甘い記憶が全て霞んでしまう程の美しさだ。
魚の体の下半身と魅惑的な割れ目が倒錯的な欲望を抱かせているのだろうか。漁師の中にはエイの総排泄孔を性具代わりにする者も多いと聞く。
しかし、同じような器官を持った女体が相手ならば……
「考えただけで海に飛び込んでしまいそうだな。自制せねば」
ここに来たのはあの魔物たちと倒錯的なセックスに更け込む為では無い。あくまでも彼女達の歌声を聞きに来たのだ。
そう分かっている筈なのに、俺達はたくさんの人魚が寄り添う岩場に釘付けになっていた。
「隊長、油断しちゃいけませんぜ。結局の所、あいつらは魔物だ。隙があれば俺達を喰いにかかってくる」
「分かってるよ。だが近づかねばあの女どもの歌声もよく聞けないだろう」
俺は船を岩場に近づけるよう命じた。座礁しない安全圏ギリギリだ。
と、船が近づくのを感じ取った何匹の人魚達が海に飛び込んだ。
「ねえ、私達と遊びましょう?」
すぐ近くまで来た何匹かが顔を出して俺達を誘っている。その人懐っこさが船に寄ってくるイルカのようで愛らしさすら感じてしまう。
しかし、彼女達は魔物なのだ。純粋無垢な好奇心で近づいてくるイルカたちとは違う。その行動の根源には邪な欲望しかない。
部下に目線で合図を出す。その部下は俺の代わりに人魚達に言い返す。
「ダメだ。アンタ達は男を喰うって言うじゃないか」
「ええ? いいじゃない。貴方達みたいな屈強な戦士に私達がかないっこないわよ」
「さあ行った行った。これ以上近づいてくるなら射るぞ。流石に船に上がってきたら俺達も戦うしかないからな」
若い男達が船の縁に立って相手をしているが、本気で人魚の誘いに乗る者はいない。彼女達の危険性は皆ある程度分かっているのだ。
船上にいる間ならば奴らに負ける事は無い。しかし、水の中ではどんなつわものでも赤子同然だろう。たちまち足を取られ溺れさせられ、あとは彼女達の玩具だ。
「あん、私達が男漁りにきたのバレてるぅ♡」
「別におぼれ死なせたり、船を沈没して貴方達を殺しに来たわけじゃないの。信じて」
「そうよ。私達はただ屈強な男達と遊びたいだけよ。泳げなくてもエスコートしてあげるから飛び込んでらっしゃい ララ~ラ~♪」
船の周りを纏わりつくように泳ぐ人魚達は喉慣らしなのか発声練習を始めた。その高音域の美声だけで少し心がときめくのを覚えてしまう。
それに加えて艶めかしすぎる裸の上半身。男達全員の生唾を飲み込む音が聞こえるようだった。
「分かってるなら早く歌っておくれよ。俺達は嬢ちゃんたちのエロい歌声を聞きに来たんだぜ」
「なぁんだ。やっぱりそれが目的かぁ♡」
副長のオヤジが人魚達に目的を話すと、絶えず俺達を誘惑してきた数匹は岩場に戻っていく。
ばしゃんと音をさせて水面から跳躍、そのまま岩場に美しい身体を横たえる。
いよいよ始まる。俺達はその成り行きを期待と欲望を膨らませながら見守る。
「じゃあ皆いくわよ」
「あの殿方たちを虜にしてあげましょう♡」
リーダーらしき金髪巻き毛の人魚が鷹揚に両手を掲げ、その合図で岩場中の人魚達が歌い出した。
「「ララ~ラ~♪」」
何重にも重なった美しい歌声だった。
その歌声がたちまち船上の男達の頬を緩ませていく。
「おお……何て美しい歌声なんだ」
「一流の歌劇ですら聞いた事が無い……」
それはまさに魔の魅惑とも言える代物だった。繊細な旋律と、時折浮かべる人魚達のどこかエロティックな表情は俺達の中にあった堅牢な意志をたちまち綻ばせていく。
岩場をゆっくりと過ぎていく船を追うように、人魚達が次々と岩場に飛び込む。
「♪~~~~♪~~」
海面から顔を出し歌い続ける人魚を見ていると、この海域から去り難くなる。
自然と船速が落ちる。耳栓をしている漕ぎ手達には歌声は聞こえないが、眼は利く。
ゆっくりと櫂を回しながらも、視線は女体へと向けられるのは男の本能だろう。海面の人魚は誰もかれもが絶世の美女だ。しどけない肩から豊満な胸元の谷間に視線が移る。
見る間に張り詰めていた股間の膨らみは更に硬くなっていく。
「んく……♡」
ズボンの固い布地に擦れるイチモツを感じながら、俺は救いを求めるように人魚達の美貌に視線を集中させる。
彼女達の歌声、姿を五感に刻み付けながら鼓膜を震わせる快楽と共にこの一時を愉しむ……
「ハアハア♡ もう我慢できねえっ♡」
すっかり顔を上気させた副長が船べりから身を乗り出そうとしていた。
「あは♡ 来た来た♪」
「来てぇ♡ 私達が手取り足取り支えてあげるから安心して飛び込んでぇ!」
黄色い声を上げながら数匹の人魚が副長を誘惑する。
「んがあ♡ 青髪のあの人魚……かわいい♡ すぐ戻るから海に飛び込ませてくれ!」
「落ち着いてくださいよ、副長!」
部下が背中から抱き着いてすんでの所で副長を留めていた。
「あのエロオヤジめ……」
普段であれば一喝するのだが、俺も人魚達の歌声に夢中になってしまってその様子を傍観するだけ。
すぐに間近の水面で歌い続ける銀髪の人魚に視線を変えた。
海面に銀糸のような髪を揺蕩わせながら、その人魚は歌っていた。眉との間隔が狭いアーモンド形の瞳はどこか童顔っぽい。その虹彩は人間では見られない美しいシルバー。
「一番強そうな人見つけたぁ~♡」
細く白い手を俺……いや、俺だけに差し伸べて歌声を響かせる。
「う……くぅ♡」
鼓膜から入り込んだ美しい歌声に直接脳が揉み解されているようだ。
甘美な快楽と共にあっという間に黒い染みが股間に浮き出てくる。
マストに縛られた身体を揺さぶる度、ズボン生地に擦れるペニスが快楽信号を俺の脳髄に送り続けているのだ。
喉から漏れる吐息は震えていた。
「ふふ……私の歌声で感じているのね♡ ララ~♪」
気を良くしたのか銀髪の人魚は更にトーンを上げて歌い続ける。
頭の奥底まで染み渡るメゾソプラノの美声が脳を蕩けさせ、多幸感を生み出してくれる。
全てがどうでもよくなる……
「アハ♡ この人間達そろそろ正気を失いそうね」
「もう少しね、追い込みいくわよ♪」
人魚達は船をぐるりと取り囲みはじめた。
流石にぎょっとしたのか漕ぎ手達は櫂を急いで回し始めるが、何人かは海面から覗く人魚の肢体に視線を完全に奪われていて夢中になってしまっている。
足並みが揃わなくなった船はちぐはぐな進み方になる。蛇行するように船体が揺れる。
「らめだぁ……ちゃんと漕げぇ♡ 岩場にぶつかるぞぉ……♡」
酩酊したような声で兵士の一人が叫んでいるが、他の連中は殆どが人魚の虜となっていた。
副長を押さえていた男ですら海面から手を伸ばす人魚をうっとりと見つめている。
数匹の人魚が手を伸ばして船べりに近づく。その手が海中に引きずり込む亡者の物ならば逃げようともするのだが、副長たちを海へと誘い込もうとしているのは美しい人魚なのだ。
「ふふ♡ 捕まえたぁ♡」
「ぐはぁ♡」
ざぷんと音をさせてまず副長が海に落ちた。背中から引き留めていた若い兵士も連なるように船から転がり落ちていく。
群がる人魚達。
「あはは。やっぱりもう正気を失っているわね。性欲旺盛な男の人は嫌いじゃないわ♡」
恋人同士のように人魚と抱き合う若い兵士。
岩場で歌っていた残りの人魚達もこちらに向かってくる。
副長の周りにもたくさんの人魚が集まっていた。まるで餌に群がる魚の群れだ。
「ねえ、こっち。貴方達も早く船なんか降りてこっちに来るのっ♪」
背泳ぎの格好で人魚が海面で誘っている。露わになった二つの乳房。魅惑的なヘソの窪み。
そこから視線を落とすと、独特のエロティシズムを持つ人魚の女性器が波を纏い妖しく艶めいていた。
「駄目だ。もう辛抱堪らん!」
その光景にとうとう理性が溶かされたのだろう。両手を揃えて海面へと飛び込む兵士が続出する。
人魚に抱き着き海面で乱れる男達。
「ふふ……そうがっつかなくても大丈夫よ。ね……♡」
「ふぁあい♡」
人魚に抱き寄せられ耳元に直接歌声を注がれる。
男の顔は見る間に蕩け、人魚に抱き着きながら海面を漂う。
人魚と一心同体になりながらロールしつづける身体はがっちりと人魚の下半身を抱きしめていて食らいついたように離さない。人魚を離すまいと抱き着いた男の欲情がそのまんま形となったような体勢だった。
いつの間にか脱がされていたのか男の下半身は何も身に纏っていない。
人魚が身体を回転させる度に、海水を被り艶めいた男の尻がこちらに向けられる。
既に腰を振っている所を見ると、既に挿入しているらしい。
「あん♡ 温かい……人間のチンポ最高♡ ねえ、もっと、もっとちょうだああい♡」
「はひ♡ もっと腰ふりゅ♡」
骨抜きにされた男のアヘ顔。戦場で共に戦った兵士の魂は大海へと洗い流されてしまったようだ。
「ああ……♡ あはぁイクぅ♡」
水中で激しく揺さぶられる男の腰の動きが速くなる。
射精を促すように人魚が耳元で歌い続けている。
「ぐばぁ♡ ごぼごぼ……」
挿入した男を抱き締めながら、人魚は沈んでいった……
「くそ……やばいのに。人魚にヤラれてるのに♡」
部下が何人も海の魔物の餌食となっているのに、俺は興奮を抑えきれない。分かってはいるのにこの状況を打破しなくてはという危機感が伴わないのだ。
あるのはただ純粋な欲望。もっと人魚の声を聞いていたい! ヤリたい!
そうこうしている内に人魚がとうとう船上へと上がってきた。
「くそぉ。こいつら船に!」
「ふふ……捕まえたぁ♡」
焦った漕ぎ手が剣を抜こうと手を掛けるが、人魚はそれよりも早く抱き着く。
「ねえ、こんな耳栓は外して……貴方も私の歌を聞いてみたくない?」
「やめ……くぁ」
耳栓を両手で優しく外しながら、人魚は艶めかしく唇を動かし漕ぎ手達を歌の虜に変えていく。
最早、船上は乱痴気騒ぎだった。ところ構わず人魚との異種姦に明け暮れる男達。彼らは全てセイレーンの歌声で理性を失くしてしまっているのだ。
十年戦争で共に戦った頼れる友。しかし、今の彼らは娼館で欲望に溺れる無力なオスと同じだ。
「あは……貴方も遊びましょう」
「うわ、すごい胸板♡」
人魚が二匹、マストに縛り付けられた俺に抱き着いてきた。足元から抱きついた人魚は尻尾を甲板にぺたんとつけて、徐々に体を持ち上げて這い上がってくる。
その内の一匹はあの銀髪の俺好みの人魚だった。ルージュを塗ったように艶めいた唇が俺の口に近づき……
「ちゅぷ♡ れろぉ♡」
「ぷは♡ おお……♡」
舌を絡めながら俺は人魚とのキスを堪能する。
「ふふ……♡ いい顔。もう交尾の事しか考えられなくなっちゃってる♡」
「黙れ……」
人魚が俺の腰元を見下し、勃起しきったズボンの膨らみを撫でた。
「ねえ、入れてみない?」
そう言って誘うように目を細める銀髪人魚。クロームシルバーの虹彩が俺を捕らえて離さないと言っている。
視線を落した先には人魚の女性器があった。魚の身体との境界のすぐ下に位置する縦に割れた裂け目。収縮を繰り返しながら潮を垂らす姿は人間のそれにそっくりだ。
時折ぶぱぶぱ噴き出しているのは愛液なのだろうか。どうやら銀髪人魚も発情しているらしい。
「私たちのマンコってすっごい滑るし、狭くて人間の処女よりも気持ちいいって評判なんだから♪」
「あん。ガラティアったら早速いい男見つけてがっつき過ぎよ」
もう一匹の人魚が不満そうな顔でガラティアと呼ばれた銀髪人魚を見ていた。
「貴方もさっさと相手を見つけなさい」
「ふん。もっと線の細い可愛い男の子にするわ♡」
しかし、不機嫌なのも一瞬だった。この船には殆ど無力の男が山程いるのだ。
入れ食い状態でセックスできると思ったのだろう。その人魚は魚の尾を引き摺らせながら離れていった。
後に残されたのはガラティアのみ。
「ねえ、早くヤリましょうよ」
腰元に手を回していたガラティアが縄を解く。
甲板に転がった俺は寝そべる形でガラティアを見上げた。
視界いっぱいに広がるたわわな乳房はぷるんと揺れる。
「おお……♡」
「あん♡」
こちらを見下すガラティアの胸を揉むと、歌うような可愛らしい声で喘ぐ。
ガラティアはすぐに俺の上に被さってくる。ぬるっとした冷たい魚の身体が我慢汁で滑るようになった下半身を心地よく擦った。
「くはぁ♡ 何て気持ちいい肌触りなんだ」
「ふふ♡ 人間の女体とはまた違う気持ち良さでしょう?」
ガラティアが流し目で俺を見つめる。すぐに抱き寄せ体勢を変える。
「あんっ、セックスする気になってくれたのね」
俺が上に跨る形でガラティアを見下ろすと、彼女は白い肌をほんのり紅潮させる。まるで初恋をした少女のような嬉しそうな顔だ。自然と俺も胸が高鳴る。
「入れるぞ♡」
「うんっ……来て♡」
俺はガラティアの銀糸のような髪を撫でながら、同時にズボンを下ろす。
硬く勃起したペニスがずるりと人魚の下腹部を撫でる。鱗が無い腹側は滑りがよい女肉という感じだった。
硬い芯が人魚マンコに入れようとする度滑る。
「あん……すっごい硬いのね貴方のチンポ♡ 一番強そうな身体してるだけあるわね♡」
ガラティアはすっかり欲望に染まった顔で俺を見ていた。サメの歯のような鋭い犬歯をチラつかせ魔物の本性を隠そうとしない。
しかし、その欲情に燃える表情と仕草は、娼館の女そのものだ。男を気持ち良くさせる事に至上の悦びと優越感を見出すメスの顔。
「く……流石に滑るな。なかなか入らん」
「焦んなくても大丈夫よ、こうしてるだけで私も気持ちいいから……あん♡ また逸れたぁ♡」
俺の胸板を指先で転がしながら、人魚ガラティアは弄ぶように俺の耳元で囁く。
やはり魅惑的な歌唱力を持つだけあって、声音の使い方も男を興奮させるのを心得ているようだ。乳首と耳から責められ、俺は焦燥感と快感がせめぎ合う。
「く……おおおっ♡」
「入ったぁ♡」
ようやく割れ目に亀頭が引っかかり、人魚はその瞬間俺の背中に手を回し一挙に抱き寄せる。
引き込まれるように奥へと入っていくペニス。人魚の膣内は肉厚たっぷりで強烈に締め付けてくる。
「くそ♡ 入れただけなのにイキそうになりやがる♡」
「いいのよ。すぐ出しても……何回でも射精していいの♡ ね、種付けして♡」
人魚がぐっと顔を上げて俺の耳元にキスをしながら囁いた。
「ねえ、貴方の名前教えて♡ きっとさぞかし名高い英雄なのでしょう?」
ガラティアの一言一句には俺の戦士としての矜持を簡単に打ち砕く魔力が込められているとでも言うのだろうか。
どんな女相手にも常に優位と余裕をもって接してきた筈の俺の理性があっという間に音を上げる。
「ユ、ユリシーズ♡」
「そう……ユリシーズっていうんだ♪ 強そうな名前なのね」
指で俺の背骨を撫で上げるガラティア。
「はぁ……♡」
情けない声が吐息と共に漏れる。
「ねえユリシーズ。もっと強く締め付けて欲しい?」
「嘘だろう……これで力を抜いていると言うのか?」
喉を鳴らしながら笑うガラティア。その瞳の奥底に欲情に染まりきった汚濁が見えた。
瞬間、
「んほ――ッ♡」
強烈に膣内が収縮し、俺のペニスが文字通り締め上げられる。
「ねえ、いくら貴方が英雄でも、こんな技には耐えられないでしょう? 早くイキなさい♡」
勝ち誇った顔で人魚が俺を抱きしめる。
俺は舐められまいと虚勢を張る。
「ふ……この程度で? 俺が音を上げるとでも……まだまだっ」
「そう……なら♪」
いうが早いか、
「♪~~♪~~~」
ガラティアは耳元に直接唇を付けて歌い出した。
「おおおお――ッ♡」
瞬間、俺の中で何かが壊れた。思考がぐちゃぐちゃになり、これまでせき止めていた筈の精液が一挙に決壊した。
どぴゅどぴゅるるるると精液がガラティアの奥底へと吐き出されていく。
「んく……あぁ♡」
「はあはあ♡ イッたのね♡」
凄まじい快楽と開放感に腰が抜けそうになる。満足そうにガラティアは俺の髪を撫でる。
そして俺の身体を持ち上げ、船の縁へと引きずり始める。
「お……?」
ずるずると、引っ張り続けるガラティアに俺は抵抗できないでいた。
射精のオーガズムの余韻は思っていた以上に酷く、恍惚状態で気が入らないのだ。
「ふふ……私達の歌には催眠効果もあるのよ♡ もう貴方は私達からは逃れられない……このまま海の底の住処まで連れて行ってあげるわね♡」
ガラティアはまさに海の魔女に相応しい妖艶な顔で俺を見つめながら呟いた。
俺の意識は船べりから海に落とされた瞬間、途絶えた――
ここはどこだ……
意識を取り戻した俺は、身体を不思議な感覚が包んでいる事に気づいた。
「なんだ……どうなってる」
間違いなくここは海の中だった。
日光の明かりは青暗い世界の遥か遠くにぼんやりと見えるだけ。
しかし、俺は水中だというのに息が出来ている。
「ぐば……これは……」
俺の身体をうっすらと包み込んでいるのは空気の膜だった。息を吸えば清涼な空気を取り込める。溺れる事も無かった。
「ふふ、気が付いたようね♡」
周囲を泳ぎ回っているのはガラティアだった。
いや、ガラティアだけじゃない。暗い青の遠くには同じように膜で包まれ水中でもがく俺の仲間達と、その周囲を優雅に泳ぐ人魚達が見える。
「俺をどうするつもりだ?」
「どうしたの? 怖い?」
水の中だというのに互いの声がはっきり聞こえる。ただ違うのは身体が地上のように動かない所。もがいても身体は重力を失い漂い続けるだけだ。
「貴方達には私達の子作りの相手になってほしいの、それだけよ♡」
水中で泳ぎ回るガラティアは俺を見て歪んだ――しかし美しい笑みを浮かべた。
顔を近づけてきたガラティアは唇を奪うと、手を取り指を絡ませてくる。
「ふふ♡」
間近に迫った美貌に俺は心を鷲掴みにされるような感覚に陥る。魔物に追い詰められている状況だというのに恐怖感も沸かない。
「怖い顔よユリシーズ。英雄ともあろう男が非力な人魚を恐れているの?」
「く……そんな訳あるかっ」
俺は咄嗟にガラティアの唇を奪った。
「んっ♡ ちゅぱ♡」
「くぉ♡ れろお……」
舌を絡ませる度に電流のような快楽が背骨を走る。
本来ならば一刀の下に斬り捨てるか絞め殺すかして一刻も早く地上を目指さねばならない。
それなのに俺は水底でこの人魚と交わっていた。俺の心に湧き立つのは戦士としての勇気ではなく、美しい女を前にした時と同じ、どうしようもない男としての本能だった。
今この人魚と出来るだけ長く抱き合っていたい。この美しい身体をぐちゃぐちゃに犯してやりたい!
「ん……んあああっ♡」
「こっちよ、来てぇ♡」
ガラティアが魚の尾をくねらせ、俺の手を引く。
更に深くへ引っ張られていくと、海の底に何かが見えた。
「あれはシャコ貝か……?」
「そうよ、ふふ♡」
波打った巨大な二枚貝。真珠を採取する事も出来るその貝は既に中身は無く、殻だけがぱっくりと開いた状態だ。
ガラティアと二人、バケモノのような二枚貝の殻を囲みながら中を覗き込む。
中に真珠は見当たらない。朽ちてからかなりの時が経っているようだった。
「ここに俺を連れてきて、一体どうするんだ?」
「ちょっと待っててね」
そう言うとガラティアはシャコ貝へと尾を向けて、
「んんッ♡」
踏ん張るように貝の縁を掴みながら貝の隙間に尻尾を滑らせる。喘ぎながら顔を仰け反らしたその瞬間、彼女の女性器から何かが飛び出し、貝殻の中へとゆっくり落ちていった。
キラキラと鈍く輝く丸い物体。
「まさか、これは卵か!」
「そうよ……ふぅぅん♡」
ガラティアは恍惚な顔で俺を流し見ながら、更に力んだ。
卵は尚も巨大貝の中へと落ちていく。
「産卵気持ちいい♡ んくぅ♡ まだ出る……っ」
「まさか人魚が卵生だったなんてな」
女としての悦びに浸った顔でガラティアは産卵を続けていた。
俺は驚きを隠しきれない。初めての光景だというのに人魚の産卵があまりにエロティックで倒錯的な興奮を覚えていた。
食い入るように見入っていたら、頬をガラティアに撫でられる。
「はあはあ♡ どうかしら……? あんなにガン見されたら恥ずかしくてイキそうになっちゃうじゃないっ♡」
「お前の声がエロ過ぎるんだ」
「だって気持ちいいんですもの。卵を出す度にアクメ並みに感じてしまうのよ」
ガラティアは肩で大きく息をしながら、産み終えた卵を愛おしそうに見つめていた。
「それでこれをどうするんだ? 孵化するまで守れとでも言うのか?」
「少し合ってるけど違うわ♡」
そしてガラティアは思わせぶりに俺の顔をまじまじと見つめる。
彼女が何を考えているか分からない。
「……?」
「この卵には貴方からもらった子種が入ってる筈……でも、まだ足りないの♡」
もじもじしながらガラティアが俺の股間に手を伸ばしてくる。
「うぅ♡」
敏感になったペニスを細い指が絡みつくように刺激する。
亀頭先端から何かが溶け出ていく……薄っすら白い靄のように水中を漂うそれは、俺の我慢汁だった。
「この子たちを確実に孵化させる為に、もっと貴方の精が欲しいの♪」
「何言ってる、どういう事だ」
意味が分からない。ガラティアは俺の手を取り貝の近くへと誘う。
「だから……この卵にぶっかけて欲しいって言ってるの♡ 貴方の精液を」
「まるでサケの産卵だな」
驚いた。この人魚は似たような事を人間の俺にさせようとしているのだから。
「ふざけるな。もう貴様に精はやったんだ。これ以上……」
「だぁめ。もっと出さないと返してあげなぁい♡」
キスしながら俺のペニスをゆっくりとシゴき始めるガラティア。
「はうううっ♡」
たまらず射精感がこみ上げる。彼女のキスは人間以上にうまく、口内の性感帯を敏感に刺激してくる。
「もっと貝に近づけて……」
「う、やめろ……♡」
とは言うものの俺はガラティアに誘われるまま、貝に身体を横付けする。そして、ガラティアに握り締められたペニスの先は人魚の卵へと向けられる。
「そう、そこよ♡ イキなさいっ」
「おお、出るぅッ♡」
どくどくどく……
心地よい放出感に意識が昇天しそうになる。
水中に白濁が広がっていくのが見えた。濃厚な精液の固まりは卵へと薄っすらと膜のように降り注ぐ。
「いいわ、その調子♪ もっともっとドピュドピュしてぇ♡」
ガラティアは嬉しそうにはしゃぎ声を上げる。そして、耳元であの恍惚のハミングを口ずさみながら手コキを続行する。
「ララ~♪ 繁殖期の人魚は人間のおっぱいも出るのよ。吸いながらイッたら気持ちいいわよぉ♡」
「おっぱい……おっぱいだと?」
たまらずガラティアの乳房にしゃぶりつく。乳頭を舌で転がすと程なくして甘い汁が口内に広がる。
「くぁ……乳首の使い方上手すぎよ♡ やっぱり女を抱き慣れてる男は違うっ♡」
ガラティアもまた快楽に身を委ねていた。じたばたと尻尾が動き水流を強める。
その間も手コキは欠かさない。あっという間に二発目が弾けた。
「くうううっ♡ 気持ちいい♡」
尿道を無理やりこじ開ける重厚な射精感に俺は水中で天を仰いだ。
「流石英雄の精は濃くって違うわ。これならいい子が産まれそう」
海水に溶けた精液がヴェールのように卵にかけられていく。その様子をじっくりと見届けたガラティは満足気に頬を緩ませる……母性に満ちた顔で。
「さあ、次よ。また射精してもらうんだから♡」
「ちょ、まだ続ける気か」
しかし、ガラティアの手コキは収まる気配が無い。射精したばかりで敏感になった亀頭を揉み解しながら三発目を急かし始めたのだ。
「もっと、もっとよ……♡」
「え……」
顔を合わせたガラティアの顔は飽くなき欲望に染まりきっていた。
サメのような鋭い八重歯を俺に向ける人魚。全く手加減ってモノを知らない。
「ほら……ほらほら! 早く射精しなさい♡ 貴方はずっと射精して少しで多くの子種汁を卵にぶっかけるのが仕事なんだから」
「お前何言って……くそ、また上がって来やがった♡」
俺の抵抗を弱めようと、ガラティアが再び耳元に歌を囁き始める。
あっという間に全身が弛緩し、感覚が握り締められたチンポにしか行かなくなる。
あるのは射精への欲求のみ。
「う……イク。またイク~ッ♡」
「あはは! 三発目出た♪ ほら、もっと、早く充填するの! 私のおっぱい飲めぇっ♡」
「ぶぶぶぶぶ」
俺の顔を掴むと、ガラティアは無理やり自らの胸へと押し付けた。口内に迸る甘い人魚のミルクは俺の股間をますます硬くし、人間としての理性を失わせていく。
――脳裏に浮かんだのはサケの産卵、その最期だ。
産卵期を終えたサケ達は朽ちた死体となって川岸に打ち上げられていた。それが卵に放精――精液をかけ続けたオスの末路なのだ。
俺もまた身体が干からびるまで精を捧げて死ぬと言うのだろうか……
しかし、その問いの答えが俺の中で出る事は無かった。
「♪~♪~」
人魚の歌声が全てを蕩かす。思考や身体の水分が全て精液に変えられていくようだ。
「んほおおおお♡ イク、またイクイク~♡」
「あんっ♡ いいわ、もっと出すの! 精液ぶっかけて……そう、息が続く限り貴方は射精し続けるのよ♡ あはははは! あはははっははは♡」
遠のく意識の中、美しい人魚の歌声に混じって精液が白く広がるのが見えた。
霞む視界で尚も響き続ける恍惚の歌声。俺は強制的な連続絶頂に達し続けながら意識を失っていた。